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テストに出ま〜す – 嗜好のけんちく〈5〉

功山寺仏殿について書く。

山口県には国宝に指定される建造物が三つある。山口市の瑠璃光寺五重塔。下関市の住吉神社本殿と功山寺仏殿だ。

功山寺仏殿は鎌倉時代初期(1320年)に禅宗寺院に流行した禅宗様(ぜんしゅうよう)という建築様式で建立された。現存最古の禅宗様建築とされる。

大学で建築を学ぶと「建築史」という科目がある。日本建築史では仏教建築は必須で、特に鎌倉時代では「禅宗様を代表する建築は功山寺仏殿と円覚寺舎利殿」というのが必覚事項だった。当時、テキストの中の「功山寺仏殿(山口県・国宝)」という表記に、あぁ「山口にも歴史的価値のある建物があるんだぁ、しかも国宝!」とそこで初めて認識・関心したこと、そして、先生が「ここテストに出ま〜す」とお決まりの文句。本当にテストに出た個人的にとても印象深いけんちくだ(本題とは全く関係ない)。

金山功山寺のある長府という街は、江戸時代は長府藩(毛利家の支藩)が置かれたところで、長府毛利邸、下関市立歴史博物館の他、歴史と文化の薫るコンパクトながらも美しい街だ。

さて功山寺。

総門を抜け山門までの丘を登る参道。春先から夏にかけては瑞々しい緑、秋は紅葉が覆い被さってきて季節ごとの美しさに心洗われる。木々の生気に目を奪われながら視線を前に向けると禅宗寺院らしく中国風の山門の威容にこれまた、ハッとさせられる。そんな山門を抜けると正面に主役の功山寺仏殿。

先に触れた通り、「禅宗様」という建築様式を代表する建造物だ。普段、内部は非公開のため外観からわかる特徴は、強い反りのある屋根、屋根を支える垂木は放射状に並べられ(扇垂木)、組物、火灯窓、、、専門的な特徴を挙げるとキリがないので割愛するが、仏殿の前に立つと、どっしりと地面の上に立つ小さいながらも重量感のある印象と、深い軒と強く上を向くほど反り上がった柿葺(こけらぶ)きの屋根の浮遊感を同時に感じさせてくれる。複雑な木組や、かなりの部材数にも関わらず細かい細工やその組み合わせにより、凛々しく落ち着いた優美さも。

ぜひじっくりと細かいところまで見てほしい。

以下余談も。

境内には維新の志士高杉晋作の像がある。1863年、高杉らが起こした藩内クーデター、功山寺挙兵(回天義挙)の舞台となった。この時高杉は功山寺に匿われた三条実美ら五卿に「只今より長州男児の肝っ玉お見せ申す」と発して、挙兵をしたとか。また、寺には坂本龍馬の遺書が残るなど、幕末の華々しい様々なエピソードも。

寺の近くには、落人伝説の残る場所も。晴れた昼間に訪れたが、森閑とする竹藪を抜けた先にある社の雰囲気は、歴史の華やかな部分とは違った一面も。他にも長府の街をぜひ散策して欲しい。

 

おすすめ観光情報の様になったが、功山寺に限らず、街並みや歴史、自然環境などのいわゆるコンテクストを見たり体験したりしながら、目的の建物を見ることで様々な見方・感じ方ができて、より楽しくけんちくを見ることができると思う。

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