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⑳仏の門

「仏教」ってなんでしょうか。

2500年前にネパールでお生まれになった王子様がすべてを捨てて出家し、辿り着いた境地をお説きになったもの。そう説明するのもいいですが、「ひとりの人間の覚醒の産物」と片付けるにはあまりに凄まじく、また時代を超えても決して色褪せることのない教えです。

① はじめに

『釈迦の一生』2019年、カトマンズにて制作

インド発祥の仏教、その種は大切に守られながら海を渡って日本に伝わりました。仏教は日本で十三宗五十六派に分かれているといいますが、目指すのは「煩悩から解放されて迷いと苦しみのない境地に達すること」であることに変わりはありません。

そして人間として生まれた限り、迷いや苦しみを味わわずに命を終えることなどできません。目の前の欲と喜怒哀楽に振り回され、栄華は衰退を予言し、わたしたちは必ず死にます。では、なぜわざわざそんな苦界に生まれ落ちるのか。死んだらどこへ行くのか。それを説明するのが仏教です。

『孔雀明王図』2022年、世界遺産仁和寺にて

 

お寺で個展をさせていただくと、作品を前に「自分は無宗教なので」という枕詞を使われる方が少なくありません。無宗教という自認も、結構なことです。でもこうやってわざわざお寺に来られて仏画をご覧になられているんですから、もう仏様に見つかっているということになる。それでわたしはよく「あなたもこのお寺さんのご本尊さんに招かれたんでしょうね」とお伝えします。

『准胝観音』2023年、眞光院さまにて

 

仏教を知りたいと思ったとき、教義に気を取られすぎる必要はありません。きちんと理解してから…と思っていると実践を逃してしまいます。仏教は「哲学」ではありません、生きるための実践的「宗教」です。犀の角のように、ただ独り歩むための。

描くだけでなく、仏画師も門前に立って仏教のことを伝えなければならないと思っています。せっかく人間に生まれたからね。

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