なんだか最近、においに鈍感になってきた気がする…
そんな声を聞くことが増えました。マスク生活やスマホ中心の暮らしが長引いたことで、嗅覚の感度が以前より鈍っている人が増えているのかもしれません。
でも実は、嗅覚って何歳になっても鍛えられる唯一の感覚だと知っていましたか?
そして鍛えることで、認知機能を高めたり、運動能力に影響を及ぼしたり、生存率が高くなったり・・・と心にも体にも嬉しい変化が起こってくる事もわかってきました!今回はそんな“嗅覚を鍛えることで起こる良い事について書いてみますね。
① アロマテラピーと認知症予防
嗅覚は、記憶や感情と深く結びついている感覚というのは前回お伝えしました。実は認知機能との関連性が注目され、カリフォルニア大学アーバイン校の研究チームが2023年に発表したアロマの精油を使って認知機能に与える研究を目にしました。
60歳から85歳の健康な高齢者にローズ・オレンジ・ユーカリ・レモン・ペパーミント・ローズマリー・ラベンダーの7種類を使って、毎晩2時間、アロマディフューザーで香りを広げ6か月間過ごしてもらうだけ。その結果、香りを取り入れたグループは、認知機能が226%も上がったそうです。これは、認知機能の維持や認知症の予防に役立つ可能性があるということです。
U C Lのマイケル・ヤッサ教授は、「嗅覚は記憶の中心に直接アクセスする高速道路のようなもの」と言っています。高速スピードで記憶や感情にアクセスする経験、アロマで体験してみるのもおすすめですよ。
香りを嗅ぐ=脳を使う習慣です。これを意識するだけで、将来の脳の健康への一歩になるかもしれません。
② 香りで早期発見
嗅覚の低下は、運動への影響が明らかになってきました。フレイル(心身の虚弱)やサルコペニア(筋肉量の減少する老化現象)で歩くのが遅くなったり、つまずいたり、階段を登るときに手すりが必要になったり、ペットボトルのキャップが開けにくくなったり・・・これも今から嗅覚を鍛える事で予防できるようです。
米国のARIC(Atherosclerosis Risk in Communities)研究では、約5000人の高齢者を対象に嗅覚とフレイルの関係を調査しました。その結果、嗅覚が低下している人は、フレイルのリスクが2倍以上高い事と歩行速度や握力の低下と関連していることが報告されています。
最近、匂いに鈍感になってる人、要注意です。嗅覚を鍛えてアンチエイジングですよ。
③ 鼻が効く人は長生きできる!?
嗅覚の状態は、健康寿命や生存率にも影響を与えることが研究で明らかになりました。
アメリカの研究では、嗅覚テストで低いスコアを示した高齢者は、5年以内の死亡リスクが高まることが示され、オーストラリアの研究でも、嗅覚の低下が死亡率の上昇と関連していることが報告されています。鼻がきく、匂いに敏感な人は健康で長生きできる可能性があるのです。
④ どうやって鍛えるの?
何歳になっても嗅覚は鍛えられるとお伝えしましたが、ではどうやって鍛えるといいのでしょう。
日常でできる嗅覚トレーニングをご紹介しますね。
嗅覚を鍛えるのに特別な道具や知識はいりません。
簡単な習慣を取り入れるだけでO K!
• 毎朝、1種類のアロマをかぐ習慣を作る(ラベンダーやレモンなどお好きなアロマ)
• 食材の香りをしっかりかいでから料理・食事をする
• 街を歩くときに、周囲の“におい”に意識を向けてみる
• 季節の花や自然の香りに触れる時間をつくる
ポイントは、“意識して嗅ぐ”ということ。無意識に流れていたにおいに、ひとつひとつ丁寧に意識を向けてみるだけで、感度はどんどん上がっていきますよ。
情報やスピードが溢れすぎてる今、つい自分の“感覚”を置き去りにしてしまいがち。
でも、嗅覚を意識する時間は、そんな忙しい日常の中で「自分に戻る」大切なスイッチになると私は思っています。
香りに耳を澄ませることで、ほんの少しだけペースを緩め、自分の心や体に寄り添えるようになる。そして、その積み重ねが、これからの人生そのものの“質”を変えていくような気がします。
さあ、今日はどんな香りに出会えるでしょうか?
まずは、コーヒーや紅茶、洗いたての洗濯物の香り、新緑の木々の香りなど、日常にある“好きな香り”をひとつ見つけてみてください。
嗅覚の扉は、いつでもあなたの中に開かれています。