カルチャー掘り起こしとくにもやまにも

文化情報サイト徳にも山にも ロゴ

【レポート】小粥展

とくにもやまにも事務局よりイベントレポートをご紹介します。

今回は3/14から3日間開催された「仏画師 小粥展」について、当ウェブサイトでも連載中の藤村さんがレポートしてくださいました。

 

《2024年3月14日から16日まで、蔦屋書店 周南市徳山駅前図書館で開かれた「仏画師 小粥展」。

「とくにもやまにも」でも連載を持たれる、仏画師・小粥さんの作品展にお邪魔した。

展示作品は、細密を極めるチベット仏画と、様々な技法で描かれる神仏画とに大別され、それらがシームレスに鑑賞できるよう工夫されていた。

まずチベット仏画は、描かれるものや構図等、予めすべてが細部まで幾何学的に決定付けられているとのことで、その精緻さに息を呑む。

気の遠くなるような文様の細かさのみならず、柔らかい曲線を寸分の狂いなく描く卓抜した技術には感嘆するばかりで、中でも聖地ネパールで描いたという「阿弥陀曼荼羅」は圧巻。

描写中の集中力は想像すべくもないが、指先がピリピリするような感覚を覚えたことは記しておきたい。

神仏画に関しては、緻密なものから大胆な筆致で描かれるものまで多種多様。

一見、衝動を晒したかのような荒々しいタッチと、繊細な構図とがキャンバス上で並立していて、見る者の感覚が否応なく揺さぶられる。

そこにはプリミティブな仏教というよりも、ヒンドゥー教の神々と諸仏の合体や、日本における神仏習合といった、大衆の信仰への希求や慈愛が多分に表現されているように思えた。

そしてこれら神仏画には、宗教的な思想というより、小粥師の持つ神仏への豊富な知識や信仰心が反映されているようだ。師によれば、遍く人の安寧と平穏、救いへの願いが強く込められているという。

また、日本であまり信仰の対象となっていない仏様を紹介したいという小粥師の意志が反映された、ナーガールジュナ画のような例もあり、ついぞ得度にまで至った師のポジティブな「念」が横溢する展示空間となっていた。

「小粥展」。何気なく生活の中に溶け込んでいる信仰というものを、改めて見つめる機会にまで繋げてくれる、得がたい体験であった。

(文:藤村雅史  )

(写真提供:川嶋克)

カルチャー掘り起こし とくにもやまにも