下の図形に「takete(タケテ)」「マルマ(maluma)」のどちらかの名前を付けてください。
これはKöhler(1947)による実験で,左側を「maluma」,右側を「takete」と名付けた人が多かったそうです(逆に付けた人もいるでしょうが,何も問題ありません。あくまでそういう傾向がある,という話です)。
このことから分かるのは,音とイメージには密接なつながりがあるのではないか,ということです。どうやら,「t/k」は角ばったイメージを,「m」は丸っこいイメージをしやすく,「e」より「a/u」の方が丸く柔らかい印書があるようです。
強い音,弱い音
『ゴジラ』(1954年版)より
日本には「ゴジラ」という有名な怪獣がいます。もしこの名前が「コシラ」だったらどうでしょう?なんだか弱々しく感じませんか?
川原(2017b)の調査では,『ウルトラマン』シリーズに出てくる怪獣の名前には,その多くに濁音が入っていたそうです。どうやら,濁音は強さをイメージするようです。
そういえば,「浜田ばみゅばみゅ」という「きゃりーぱみゅぱみゅ」のパロディキャラクターがいましたね。これは,浜田雅功の「粗雑/恐い」というイメージに合わせるため「ば」に変えたのでしょう。
かわいい音,かっこいい音
川原(2017a)は,メイド喫茶のメイドさんの名前を調査しています。その結果,萌え系のメイドさんにはマ行やラ行のような濁音化しない音が多く(「マリン」など),クールなツンツン系のメイドさんには濁音化するサ行やタ行のような音が多い(「サツキ」など)ことが分かったそうです。
それから,「テクテク歩く」と「テチテチ歩く」を聞いたとき,「テチテチ」は子ども専用という感じがしませんか?「おじさんがテチテチ歩く」と言うこともできますが,なんだか子どもっぽくてかわいいおじさんに感じます。「k」より「ch」の方が子どもっぽいということでしょう。
このように,私たちには,かわいらしさを感じる音と感じない音があります。
音とイメージの普遍性
実は,以上のような問題は,日本語だけの問題ではありません。先ほどの「takete/maluma」の実験は,様々な言語でも同様の結果が出たようですし,濁音も日本語以外の言語でも同様のイメージを持たれやすいようです。地域や文化も異なるのに多くの人々に共通性が見られるということは,音とイメージのつながりは,私たち人類に普遍的に備わっているものだといえるのかもしれません。
それではここで問題です。
『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』は学校が舞台になっており,色々な授業が受けられます。
その中のある授業で,ピカチュウの「ピッガ」という鳴き声が「喜び」「悲しみ」「怒り」のどれを表しているか,という問題が出ます。みなさんはどれだと思いますか?理由も合わせて考えてみてください。