「これが私のアナザースカイ」、なんて言葉じゃ収まらないほど遠慮なくのびのび過ごせるのがネパール、首都カトマンズ。わたしを仏画の世界に引きずり込んだだけではなく、渡航のたびに魂が磨かれるような体験を与えてくれる唯一無二の場所でもあります。
ネパールという国は多民族国家ゆえ多宗教であり、それぞれがうまく共生しているような印象を持ちます。道を歩けば辻ごとに神様の祠や仏塔があり、いたるところにタルチョと呼ばれる五色の祈願旗がつけられ、ドアの前には魔除けのレモンと唐辛子が吊るされているのを見ると、信仰がいかに日常であるかが分かります。実際に現地でよく「きみの宗教はなんだ?」と聞かれますが、無宗教だと答えることは自分のダルマがない、芯がない人間ですと言っているようなものだからあまりよく思われないのだと聞いたこともあります。日本では初対面で宗教への質問を投げかけることをあまりしないので、オープンに信仰について自分の考えを話すことはむしろ新鮮でワクワクするものです。
ネパールでは仏画制作のため、大体2週間から1ヶ月程度滞在します。わたしはいつもカトマンズの中心部にある繁華街・タメル地区に宿を選びますが、通っている仏画の工房もそこから徒歩圏内にあります。絶対神域であるヒマラヤ山脈を持つ美しきこの国で、わざわざ混沌と喧騒をつかさどる雑多なエリアでの滞在を選ぶのも、自分なりにたどり着いた「ネパールの味わい方」でもあります。
朝は現地のおじさんたちが集まる喫茶店へ行き、いつも会う顔馴染みの数人と話し、昼は仏画の先生とダルバート(ワンプレートになったネパールの国民食)を食べ、休憩にはみんなでチヤ(ミルクティー)を飲むのがお決まり。大体6時には制作を切り上げ、夕飯をテイクアウトしてホテルに戻り、夜は9時に寝る。滞在中ひたすらこの生活を繰り返すことによって、ネパールの周波数に完全に合うようになり、仏画制作以外の雑音が消える、と言えばいいのかなんなのか。ちなみにですか、ネパール人はシャイで親切な人が多く、仲良くなるほどに非常にパリピ化していきます。とにかく踊ろう、歌おう、飲もう。これはマジです。
ネパールちょっといいなと思ったでしょう。さて、次は制作のときのことなどを書きます。