話が通じる人(≒マニア)に多く出会えた高校時代の中でも、最も重要な出会いは、現在もお互いを親友と呼び合う二人の男だ。
一人は同じ小中学校出身で、部活もクラスも違ってあまり接点がなかったのだが、高校で急激に仲良くなった。
もう一人は山間部に暮らしていて、嗜好するジャンルが私とはちょっとズレていたが、やはり筋金入りのマニア。
このトリオが集まった時の共通の話題は、当時放送を開始していた「鳥人戦隊ジェットマン」と「新スパイ大作戦」で決まりだった。
「ジェットマン」とは、半ば興味を失っていたスーパー戦隊シリーズに彗星の如く現れた「トレンディ戦隊」である。
「トレンディ戦隊」とは当時の作品批評で使用されたと思しきキーワードで、平成初期に流行した「トレンディドラマ」のテイストを持つ戦隊。即ち、5人の主人公が変身して敵と戦うという従来のシンプルな作劇を保ちつつ、メンバー間、果ては敵をも巻き込んでドロドロな恋愛模様を繰り広げるという、当時としてはあまりに挑戦的な作風なのだ。
この「ジェットマン」が私を完全にサブカルの世界に引き戻してしまった。そして、それ以来スーパー戦隊シリーズの視聴を欠かすことはほぼなくなってしまったのである。
サブカルからの「卒業」は、こうして永遠のモラトリアムの果てに消えた…。
※ 「ジェットマン」はスマッシュヒットと言える作品となったため、単作のムック「テレビくんデラックス 愛蔵版」が初めて発売され、近年までシリーズ化されることとなった。
ついでに「新スパイ大作戦」にも言及しておこう。
今ではトム・クルーズの「Mission:Impossible」シリーズとして続いている(?)が、元々は1966〜1973年のアメリカTVドラマ「スパイ大作戦」だということは、ある年齢以上でない限りあまり意識されていないと思う。
「新スパイ大作戦」はその88年版であり、よりスタイリッシュに活躍するスパイの面々には大いに魅せられた。この海外TVドラマをサブカルに含めるかどうかは微妙だが、荒唐無稽なテクノロジー描写等には、確かにサブカルの匂いが横溢していたように思う。
※ 残念ながら本邦では「新スパイ大作戦」のDVD等が未だに発売されていない。これは旧作の完全版DVD-BOX。
また、この時期の一大トピックとして挙げられるのは、ウルトラマンの復活である。
テレビ放映ではなくビデオ作品ではあったのだが、「ウルトラマンG(グレート)」は驚きをもって迎えられた。何しろオーストラリアで制作された「海外TVドラマ」だったからである。
フルオーケストラによる壮大なBGMが鳴り響く中、英語で会話するキャストが怪獣と対峙し、足長マッチョなウルトラマンが登場する衝撃たるや凄まじいもので、当時軒を増やしていたレンタルビデオショップに足繁く通ったのをよく覚えている。
※ 左から、「G」が最新作だった当時の新書サイズのムック、数年前に突如発売された変身に使うペンダント「デルタプラズマー」のレプリカ、ビデオマスターを半ば無理矢理HD化した「G」のBlu-ray BOX。
ジャストなタイミングで訪れた、愛好する「海外TVドラマ」と「特撮」の合体が、私を脱出不可能な沼へと完全に引きずり込んだのだ。