台湾に移住する際,真っ先に勉強したのが挨拶表現でした。やはり日本語と違う面もあって面白いです。
例えば,別れの挨拶では「拜拜:バイバイ」がよく使われ,授業後に「先生バイバイ」と学生から言われることも多く,日本人的な感覚だとなんだか親しみを感じます。
挨拶表現が言語や地域によって違うのは当然と言えば当然ですが,実はどう挨拶するかということにも違いがあります。
挨拶の不思議
学生が先生とばったり会った時,どう挨拶するでしょう?台湾だと,例えば私が学生と会ったら「先生こんにちは。」と声をかけられることが多いです。日本だと「先生」をつける学生は少ないでしょう。
その背景には,台湾華語(台湾の共通中国語)に「老師好(先生こんにちは)」という定型表現があるからだと思います(カジュアルな「老師嗨」を使う人もいます)。台湾では,先生への挨拶で「老師(先生)」を冒頭につけるのは一般的なようです。
また,先生に「你好:ニーハオ」や「您好:ニンハオ」(丁寧表現)とは言わないそうです。台湾には,相手の名前や肩書で呼びかけてから挨拶するという文化があるのでしょうか。
次に「おはよう」について,日本だと午前 10 時半~11 時前までに使う人が多いと思います。一方,これも台湾の学生たちに聞いたところ,台湾華語の「早安」は昼 12時でも使うと答えた人が一定数いました。時間の区切り方の感覚に違いがあるのは面白いですね。
ちなみに,夜も使うという人もいましたが,それは仲が良い人限定だそうです。夜にも使う「早安」は,恐らく若者言葉だろうと思います。また,日本でも特定の職種では夜に「おはよう」と言います。
これらは特定の集団に見られる特徴なので,世間一般の使い方ではありません。ただ,「『 おはよう/早安』は朝の挨拶だ」という説明ではその実態を表し切れないとも思います。「朝の挨拶あるいはその日出会った人への一度目の挨拶」とでも言いましょうか。
挨拶の違い,変化
挨拶はコミュニケーションにおいて重要です。しかし,言葉というのはよく使うものほど変化します。そのため身近に感じる挨拶も,世代や地域によって使い方に差があります(日本でも方言によって挨拶の仕方に違いがあるという研究があります)。
どう挨拶するか,あるいはしないかという問題の背景には,文化的・社会的な要因があるのかもしれません。
ちなみに,「こんにちは」は初対面の人には使っても,友達には丁寧すぎてあまり使わないですよね。台湾華語の「午安(こんにちは)」もあまり使わないそうですが,初対面の人にすら使わないことが多いそうです。初対面の人と午後に会ったらどんな挨拶をするんでしょうね。你好?
それから,朝によく使う「おはよう/早安」は友達にも使えて,なぜ午後の挨拶は使われなくなるのでしょう。他の言語もそうなんでしょうか。不思議ですねぇ。