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インスタントな日本語学│#5 「愛」と「恋」の違いを考える

愛と恋の違いは何か。なんだか思春期の悩みのようですが,気になりませんか?今回は,言語学の観点からこの違いを考えてみましょう。

みなさんはどう思いますか? 考えてみてから続きをお読みください。

 

 

 

名詞について

まず,下の画像を見てください。これを見ると,「恋する」は「勉強する」「運動する」の仲間だといえます。

 

 

つまり,「恋」は何かしらの動きがあるもので,「愛」は動きがない静的なものといえるでしょう。果たしてそれは,心の動きなのか,実際の動きなのか。

 

 

 

 

助詞について

「愛する」「恋する」はそれぞれ「~を愛する」,「~に恋する」という形で使います。それぞれ「を」と「に」を入れ替えて使うことはできません。ということは,「を」と「に」の違いから愛と恋の違いを考えられそうです。

下の画像を見ると,どちらも相手に及ぶ動作や感情を表すという意味があります。違うのは,「に」には「動作の到着点」という意味があることです。このことから,「恋する」には方向先があるように感じます。

 

 

しかし,「~に恋する」の「に」は,「憧れる」と同様「感情の対象」という意味に思えます。ここで,「に」を「に対して」に変えてみます。すると,「~に対して恋している」とは言えますが,「~に対して愛している」は不自然に感じませんか?

このことから,「恋する」は一方向的な行為だといえそうです。もちろん,一方向的な愛も存在しますが,恋の方がその傾向が強いのかもしれません。

 

 

 

願望表現と受身について

次に,希望表現「~たい」と受身表現「~れる/られる」について考えると,画像のように「~に恋したい」「~に恋される」の形で使うのは不自然です。

 

 

このことから,愛は自分の意志で操作できて相手に届かせる感情だけど,恋は自分の意志ではどうにもできない自然発生的なもので相手に届くかどうかを問題としない感情だといえそうです。

もちろん,相手に届かない愛もあります。しかし,本来愛というのは受け渡しが意識される一方,恋にはそれがないと考えられます。なぜなら,「愛を与える/受ける」とは言えても,「恋を与える/受ける」とは言えないからです。

 

しかし,最近「恋される」という表現がわずかですがネット上で見られます。これは,「好きバレ」という,恋している気持ちが相手にバレるという新語と関係がありそうです。つまり,最近の人にとって,恋は相手に伝わる,あるいは伝えるものなのかもしれません。

 

 

 

まとめ

言葉の特徴から愛と恋の違いについてまとめると,次のようになります。

 

 

今回は扱っていませんが,「恋愛する」はどう違うのでしょう?是非みなさんの意見をお聞かせください。

それから,今回はあくまで言語学的な考えですし,例外もあるので違うと感じる人もいるでしょう。また,言語による違いもあるでしょう(英語ではどちらも「love」に対応するようです)。何かご意見がある方はご教示ください。

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