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㉒移ろひてどとうる

前略

通い倒したどとうるで此れを書き申します。貴殿が此の文章を読む頃、わたくしはもう周南には居りません。小林といふ、水の美しさが取り柄の、小さな故郷に戻る事に致しました。二度と戻ることはないと思つたのに、不惑とも成れば、一旦人生を整えてみたく成るのかしらん。

 

恐ろしきもの。

定住。持ち家。持ち車。甘鯛の面(つら)。兜虫の雌。

 

わたくしが清少納言なら、「枕草子」にさう記します。後半の二つはさて置いて、わたくしは『自由』である事、其れを人生で何よりも大切にして来ましたから、定まる何か、が恐ろしくて仕様が有りません。但し、『自由』は一見伸び伸びとして良いですが、自己責任といふ逃げ場のない境地でも有ります。我が道を貫く為に、此れ迄にも沢山のものを手放して来ました。人並みに、婚姻の機会も有つたかと思います。

でもねえ、人がこうだからとか世間がこうだからとか、何うでも宜しい。人と比べた途端に、折角手に入れた自分の幸せまでも崩れ始めて仕舞います。自分が選んだ未来を肯定するしか無い。只独り歩め。さうすれば、何処かには辿り着くもんです。

 

 

生きていれば、小粥に出会うことが有ります。小粥は、珈琲を飲んでゐたり、働いてゐたり、仏教の話をしてゐるかも知れません。距離が近く成れば、貴殿と麦般若を飲み交わすかも知れません。機嫌が良い時は、去り際に投げ接吻をします。一緒に食事をしたなら、来世でも逢えるように成りますから、楽しみにして居ます。

故郷では祖母との時間を、そして地鎮と供養に励みます。一族には必ず因縁を解消する役目の者が出てくる、と言います。即ち我が事だと、よくよく拝み暮らします。

撮影:高崎恵

 

此れにて小粥、当ウェブサイト【とくにもやまにも】を卒業致します。

運営でも執筆でも、どうもお世話になりました。皆様に於かれましては、引き続き【とくにもやまにも】及び【にもにもラジオ】をご愛顧頂けます様、宜しくお願い申し上げます。長州は、とても良いところでした。薩摩藩領の女より愛を込めて。

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