木葉猿
熊本県玉名郡玉東町
前回に引き続き熊本の郷土玩具です。なんだか日本っぽくないですよね、アフリカや南方の民族のような佇まいです。
鹿児島本線の木葉駅の近くの「木の葉猿窯元」で製作されている『木葉猿』
『伏見人形』などの型から作る土人形とは異なり、全て手捻りで作られています。素焼きの上からいぶし焼きをして表面を黒っぽく仕上げて、赤と白と青で絵付けされています。この彩色は魔除けを表しているのではないかとも言われています。
こちらは『令和猿』という名前だったと思います。熊本工芸館で購入しました。『令和』の旗を持っていてちょこんと座った姿がなんとも可愛いです。
こちらは『子抱き猿』です。立位の猿が両手で小猿を抱えています。こういった子猿を抱える姿は郷土玩具の中でもなかなか稀なようです。子猿が「ママー」って感じで甘えているようでキュートです。安産子宝の信仰から考え出された形だと言われています。少し古いもののようで白と黄色の配色です。

こちらは見ざる、聞かざる、言わざるの『三匹猿』です。親指くらいの大きさしかありません。
木葉猿に伝えられた由来は郷土玩具の中でも最も古いと言われています。京都からの落人4人が、木葉の里でわび住いをしていた養老七年(723年)の元旦、夢枕に立った老翁のお告げにより、奈良の春日大明神を祀りました。そして木葉山の赤土で祭器を作り、その余った土を捨てたところ猿となり飛び去った。そこに鼻の高い顔の赤い巨人が現れ「木葉の土でましら(猿)を作れば幸いあらん」と告げて姿を消した。落人はこれは神のお告げと思い赤土で祭器とともに猿を作り神前に供えたところ、天変地異の災害が起ころうとも、都の落人達は無事平安に過ごすことができたと伝えられています。木葉の里は、薩摩藩の参勤交代の道中でもあったため、お土産としても広まったようです。
現在『木の葉猿窯元』では7代目の永田禮三さん、英津子さん夫婦と娘さんの川俣早絵さんが製作を行なっておられます。
今回紹介した木葉猿には他にもおにぎりを抱えた飯食い猿、馬乗り猿、団子猿、祈り猿など様々あってそれぞれに思いや願いが吹き込まれているような不思議な力を感じますね。
熊本にはまだまだ好きなものがあります。『いきなり団子』というサツマイモと小豆あんを薄い生地で包み蒸した郷土のお菓子をご存知でしょうか。
「簡単でいきなりの来客でもすぐに用意できる」ということと、熊本では方言で「いきなり」とは、「簡単」「手軽」という意味でこれらの意味が重なったことが名前の由来のようです。ちなみに「いきなりステーキ」は熊本発祥ではありません。
熊本のお菓子屋さんがそれぞれのいきなり団子を作られているようなので熊本に行った際には食べてみてはどうでしょう。
