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インスタントな日本語学│#14 言語か方言か

世界には196の国があると言われています(国や組織によって数は変わりますが)。

では,言語はいくつあるかというと,3,000~7,000と言われています。数にこんなに幅があるのは,言語と方言の違いを定義するのが難しいからです。

 

 

 

言語の系統関係

日本には,日本語の他にも言語が存在します。その1つがアイヌ語です。

北海道の先住民族であるアイヌ民族が話す言語ですが,その話者は年々減少しており消滅の危機に瀕しています。そのため,その保存が進められています。

そんなアイヌ語は,日本語と音声も語彙も文法も異なります。これらが違うということは,言語の系統関係(言語の祖先)が違うということです。そのため,日本語とアイヌ語は言語の違いだといえます。

 

 

 

国家という基準

では,言語の系統関係から言語と方言の違いを全て説明できるかというとそうではありません。

例えば,フランス語・イタリア語・スペイン語・ポルトガル語は「ロマンス語派」という言語の系統グループに属していて,特に,スペイン語とポルトガル語は,方言の違いじゃないかと言われるほど似ています。しかし,これらは別の言語として説明されることが多いです。

それは,それぞれ独立した国家において母語として扱われてきたという歴史的背景があるからだと考えられます。

 

しかし,国家という基準も絶対的なものではありません。

例えば,イギリスとアメリカはそれぞれ国家として独立していますが,「イギリス語」や「アメリカ語」とは言わず「英語」で統一されており,方言の違いとして扱われています。

これは,互いが非常に似ているからですが,どこからが似ていてどこからが似ていないのかを決めるのは非常に困難です。

 

 

 

相互理解度

もう1つの基準として相互理解度があります。これは,そのことばを聞いて理解できるかというものです。

例えば,ユネスコはこの基準に則り,沖縄と奄美には「奄美語」「国頭語」「沖縄語」「宮古語」「八重山語」「与那国語」があると分類しており,国立国語研究所の調査の結果,この分類は正確だということがわかったそうです。詳しくは,以下の動画をご覧ください。

ことばのミニ講義「日本にはいくつ言語があるか?」/ニホンゴ探検2018 (2025年7月20日アクセス)

 

現在,言語学者はこれらを「琉球諸語」と呼び,日本語と系統関係が同じ別の言語だと考えています。

しかし,沖縄や奄美も日本の地域であることから,言語の違いではなく方言だという主張もあります。

 

 

 

 

方言か言語かという議論は,言語の多様性を理解する上では重要で,地域の文化や歴史の保存にもつながると考えています。一方で,政治的な問題も絡むため,分断が生まれないように注意せねばなりません。どの言語・方言も等しく美しいわけですしね。

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