31才のとき、ひとりで四国八十八ヶ所霊場を巡礼しました。10kgを超えるバックパックを背負って、杖をつきつき遍路道。四国遍路は総距離約1200㎞といわれますが、車のお接待などを含めると歩いたのは実質900㎞ぐらいかと思います。季節は春のことでした。
徳島。『一に焼山、二にお鶴、三に太龍』といわれる三つの難所にヒーヒー言わされました。とにかく山、山、山。23番薬王寺のあと、久しぶりに太平洋にお目にかかったときには感動しました。遍路道を外れ、島へ渡って泊まったことも。小さな島から見るご来光が忘れられません。そんな発心の道場。
高知。太平洋沿いの国道55号線がとにかく続き、日陰ゼロのアスファルト道の連続に発狂しました。青、青、青。色彩鮮やか、まさに南国。これがまさかの播磨屋橋。鰹のたたき。炎天下に、文旦のお接待のありがたさ。土佐は修行の道場といいますが、しんどさに比例してあたたかい。商店街で女子高生が「頑張ってください」と声をかけてくれました。
愛媛。
日本の田舎は美しいなぁ、と心から思わせてくれました。菩提の道場。お接待でいただいたものを公園で食べ、また歩き出す。そんな日々。西条はわたしのルーツでもある。懐かしい、険しい、神秘的。天狗、犬神、化け狸。「お大師様!」と呼び止められてのお接待に、同行二人を実感する。南無大師遍照金剛。
香川。71番弥谷寺以降、友人のご実家にお世話になりました。香川は街の中の札所が多い、と油断しているとしっかり転がされます。八栗寺きっつー!瀬戸内海の美しさ。おうどん、善通寺のカタパン。マルナカに避難しながら涅槃の道場。そんなこんなで無事に結願したのでした。
1日、45km歩くこともありました。夜ごはんを考えるのも面倒で毎食「どん兵衛」、使ったサロンパスは400枚以上。いまも鮮やかに思い出します。
自分の足で歩いていない場所があるので、やり直しに行かねば。特に、黒潮町から足摺岬の38番金剛福寺。みなさまも、ぜひぜひお四国。