

上の下線部は、いわゆる若者言葉です。これらは必要というわけではなく、例えば「東京の方が暑い」で終わっても特に問題ありません。その方がしっくりくる人もいるでしょう。そのため、若者言葉を不快に思う人もいます。
しかし、言語学においては、若者にとっては価値があるから使っているのだと考えます。では、どんな価値があるのでしょう?
若者言葉とは何か
まず、「若者言葉」を定義しましょう。ここでは「10 代後半~20代後半の世代」を若者とします(定義は研究者によって様々です)。そして、この世代が使っている言葉が若者言葉といえます。
しかし、これだけではまだ不十分です。なぜなら、先ほどの①の「東京」「暑い」などは、若者が使っていても若者言葉とはいえないからです。
重要なのは、主に同世代どうしの会話で使われるということです。つまり、若者言葉とは「10 代後半~20 代後半の人々どうしの会話で使われる言葉」となります。
若者言葉の効果
では、若者はなぜ若者言葉を使うのでしょう。1 つは、「会話を楽しむため」と言われています。例えば、「悲しい」ではなく「ぴえん」と言うと、言葉のおかしさから会話に笑いが生まれ、親しみが生まれます。若者言葉にユニークな言葉が多いのはそのためでしょう。
次に、「争いを避けるため」とも考えられます。例えば、①で「暑い」と断定すると「そんなことない」と言われてしまうかもしれません。そこで、「説」「知らんけど」を使うことで、「あくまで個人的な意見だ」ということを相手に示し、批判によって傷つくのを予防しているといえます。
また、「自分の情報は正確ではない」ということも示し、相手に誤った認識を与えないようにしているとも考えられます。ある意味、配慮のある言葉だといえます。
若者言葉の背景
若者言葉は「間違った言葉」と言われがちですが、果たしてそうなのでしょうか。
若者の多くは学生です。学校という集団に属すると、必然的に同世代との会話が増えます。そして、そうした閉じた集団の中で「仲間として認められない」というのは非常に苦しいことです。そうならないためには、相手と良好な関係を築く必要があります。そこで発達したのが若者言葉です。ある種の合言葉のように、若者言葉を使うと仲間意識が芽生えます。
さらに、この世代は周りから間違いを指摘されやすい世代でもあり、間違うことへのプレッシャーは大きいことでしょう。また、最近では「論破」の風潮もあります。そうすると、曖昧な言葉で断定を避けてしまうのは仕方ないように思います。
もちろん、若者言葉を使えば人間関係が必ずうまくいくというわけではありません。また、様々な場面で使える表現を身につけるのも大事です。
ここで伝えたいのは、若者言葉は決して意味のないものではないということです。ましてや、「間違った言葉」でもありません。若者なりの工夫の詰まった言葉です。
若者言葉は、若者たちが安心してコミュニケーションするために生み出されたものだと言えるでしょう。若者と上の世代との溝は依然として大きいですが、世代を超えて価値観を受容し合える社会を目指していきたいものです。
知らんけど。