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⑴赤江瀑の世界


6月8日は、赤江瀑先生の御命日です。

山口県下関市出身の小説家、赤江瀑先生の存在を知ったのは、京都のお寺で白拍子の装束に着替えている最中でした。
6年京都に住んだ結果「土から離れては生きていけないのよ」(訳:馴染んだ山とか田んぼとか水が無いと生きていけない(切実))と山口へUターンしたはずが、その後も不思議と京都との縁が続き。「私はどこで生きていけば良いのか」と思いながら月に2度のペースで京都へ通っていた頃でした。
「山口の子」と覚えて頂くことが多く、ある方から「山口なら僕の好きな作家が山口県の下関出身だよ。すごくコアなファンの集いもある」と教えて頂きました。『赤江瀑の世界 花の呪縛を修羅と舞い』(河出書房新社、2020年)という本を下さったので読んでみた所、馴染みのある山口や京都の地名が出てくることもあり、じわじわ浸食されるかのように赤江文学の世界に誘われていきました。


[写真1:泉鏡花文学賞作家 故 赤江瀑]

2023年には下関のショッピングセンタ―で『わたしの本棚 あの人の愛読書・蔵書の本棚をのぞいてみませんか』と題した中に赤江先生のコーナーも展示されました。赤江先生の蔵書にある沢山の書き込みと、大量の付箋に驚き。気付けば本の内容より付箋や挟み込まれたメモの文字を必死に追っていました。パッと開いたページには「白拍子謡ひし時、…」の上に丸印が付けてあったりして。赤江先生はお能の道成寺(白拍子が登場します)を特に好まれたと聞いたのは、その後、赤江マニアな方々(例の「すごくコアなファン」)と一緒に旅をしてからでした。


[写真2:豊山神楽院長谷寺の登廊]

赤江文学を愛して大切にしておられる方のお話はもちろん愉しく。赤江先生と交流があった方が教えて下さる先生の言葉は、日本人のルーツに繋がるようで、何だか大切だと思えました。印象に残っているのは「花鎮め」とか。後から強烈さを増してきたのが「血天井」、足で踏んでいた床板でしかも血みどろになった…が頭上にあるという圧迫感、見上げていた時よりも後から思い返した時の方がこの世とあの世をまざまざと意識させられるようでした。

[写真3:吉祥山正伝護国寺 入口に飾られた葉っぱの草履(たぶん)]
2年前の今頃にグループラインで「今日は赤江瀑先生の命日です」とメッセージが流れました。「作品の中で先生にお会いしたい」というやり取りに触発されて、ニワカの私は仕事帰りに図書館へ駆け込み本を借りました。赤江忌に赤江先生の本を読むのは今年で3度目。読む本はもう、準備しています。

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