とくにもやまにも事務局です。先日、萩市で開催された『結ひの会』。当サイトでこ連載いただいている藤村雅史さんにレポートいただきました。
《筆者の不勉強ゆえ、以下乱文拙筆はご容赦願いたい。
「夕ざりに聴く面影の聲」と題された初日。
雨音に静寂をもたらすかのような、三味線の調弦の響きからしてすでに惹き付けられる。
広い座敷いっぱいに響く、倍音豊かな三味線と布咏師の澄んだ唄声。唄に込められた情念と景色は幽玄の彼方にあるはずが、冴え渡る技に託され、聴衆のまさに眼前に提示される。
聞き慣れない者にとっては難解であるはずの唄の意を、いつの間にか布咏師の身体を通して垣間見るような感覚。
最後を飾る地唄「黒髪」は、にわかに信じがたい音域の広さで唄われる難曲である。その圧倒的な演奏に、筆者は涙を抑えられなかった。
「ニュアンスを楽しむ 三味線と唄」と題された二日目は、少し肩の力を抜いて楽しめる趣向であった。
布咏師自らによる各々の唄の成立背景についての解説も、前日より軽妙な語り口で、聴衆からは何度も笑いが漏れた。
披露される唄の数々は、技巧もジャンルもさらに幅広く、まさに「ニュアンスを楽しむ」との題目に相応しい。
冴えに冴えた三味線と唄の艶にたちまち引き込まれたまま、布咏師による創作曲「束の間」や、富本「松魚売勇商人」まで交えた数々の唄に揺さぶられ、時間を忘れる。
繰り返しになるが、布咏師の卓越した技に、唄の世界が託される。それは本来の芸能が担ったであろうシャーマニズムの体現を見るかのようであった。》
文:藤村雅史
二日間のレポート、ありがとうございました。初日は池水みとさんによる『みとめし』と日本酒のご用意があり。ご来場の皆様が五感を満たす、素晴らしいひとときを過ごされていました。
写真:ヨシガカズマ