◼️les blue stars / Les Blue Stars / 1957年◼️
行く宛は無いけれど、彼らはよく散歩をした。
いつもの喫茶店で新聞を読んだら、通りを上がって下がって西東、ブティックに本屋にレコード屋。
遅めのランチは、ビルの2階にあるお気に入りのカフェで。
「少し食べすぎたみたい」
「じゃあ、あの店まで歩こうか」
「デザートは食べてからね」
他愛のない会話を繰り返す、彼らの午後。
陽の当たる大通りを歩けば、なんだか古い映画の主人公達みたい。
洒落た言葉で喜びや哀しみを語る時、音楽はいつだってジャズの薫りを纏っている。
デザートが運ばれたテーブルでは、細い指が軽くステップを踏みはじめた。
ブロッサム・ディアリーが渡仏して参加した1作目が有名だが、こちらは2作目。
フランス語の男女混声コーラスにより歌われる楽曲はシャンソンのカバーが中心で、どこか懐かしい雰囲気。それでも古さを感じさせないのは、アレンジの妙によるもの。オーケストラやビッグバンドをバックに、肩の力が抜けたコーラスを聴かせる。
翌1958年に発表される3作目は、コーラスとスキャットがより技巧的で洗練されてゆく。
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歌謡曲にブラジル、フレンチ、ジャズにアイドル、気の向くままに買い集めたレコードを前に気づくのは、“音楽が好きなんじゃない、レコードが好きなんだ”ということ。