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⑨旅せよ善女

放浪癖があります。でしょうね!ってあちこちから聞こえてきそうです。学生時代に藤原新也の「メメント・モリ」、沢木耕太郎の「深夜特急」を読んでインドに足が向いた、ヴィレッジヴァンガードのバックパッカー書籍棚を起源とするタイプの放浪癖です。同志たちよ、元気にやってるか。

放浪癖らしく、これまで随分と色んなところへ行きました。インドやネパールなどのアジアだけではなく、四国で歩き遍路したり、北アルプスの山小屋に住み込みながら山にアタックしたり、住所不定・自称絵描きの無双状態が8年ほどありました。その間、SATCのごとくつるんだ女友達3人がスルリと結婚・出産するのを見ても、特に焦りや不安はないどころか「あ〜カイラス山をコルラしたい※」などと思っていたのです。

※カイラス山…チベット高原にある未踏峰の聖山。コルラは廻ることを意味し、それにより罪業が消滅するとされる。

振り返っても、旅は「行けるときに行く」が鉄則だとしみじみ思います。再訪を誓うほどに心打たれた場所でも、まず日常を生きるわたしたちには「行けない理由」をいくらでも作れてしまいます。旅に行かなくても人生は進むけれど、旅がわたしの人生に喜びを増やしてくれたことには間違いありません。

「行けるときに行こう」と、20代半ばに南米・エクアドルの先住民族の村まで、友人を訪ねて行ったことがありました。フライト合計時間は片道24時間を越え、バスを乗り継ぎ、無事ボンカレーを届けてラム酒で乾杯した記憶は、いまだ色褪せずいつも優しい気持ちにしてくれます。ただ、今のわたしなら同じことは出来ないなぁと思うのです。もう全然無理。まじ遠すぎ。やっぱりあの時に行ってて本当に良かった、「行けるとき」を逃さなかったのだな、と思えます。

旅先での体験だけではなく、深夜便の離陸直後に暗い機内で慌ただしく配られる、アルミホイルに包まれただけのホットサンドも、暇な機内での時間を潰すための、普段なら絶対チョイスしないハリウッド映画も、トランジットのためだけに滞在した空港のスタバで、聞き間違えられた名前で受け取るカプチーノでさえも、ささやかな祝福のようにわたしたちを迎えてくれます。

⑨旅せよ善女

じゃあ、いま旅に出るとしたら?うーん、ネパールですかね。でしょうね!って、あちこちから聞こえてきそうです。

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