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⑮不惑の天職

人より少し得意なんだろうなと感じて、美術の世界に進もうと決めたのが高校三年生になる春のことでした。

男子サッカー部のマネージャーをしていたのを辞めて、美術部に入りました。それから受験対策として、電車で片道1時間かかるデッサン塾にも通い始めました。正しくは電車でなくディーゼル車ですけども。

1年間、とにかく手を動かしました。ナイフで鉛筆を削ることも上手くなってゆき、4Hとか4Bとか、パースとか陰影とか、ブルータスとか塩ビパイプのジョイントが、人生を構成していました。 

無事志望校に受かってすぐに、「あんまりすごい人いないな」と思いました。偉そうなこと極まりないですが、もっと「圧倒的な才能」に打ちのめされることを期待していました。それで芸術への熱が冷めて、課題はそこそこに、接客業のアルバイトに熱中しました。とにかく接客が楽しく、責任者になったり表彰されたりしました。適職とはこういうことかと思いました。

 

そこから干支が一周したでしょうか、気づけばまた筆を持つ暮らしをしています。不安定な生き方ではありますが、安心と引き換えに首輪に繋がれるよりはマシだと思っています。制作に熱中するとき、いのちを削る感覚もありますが、いのちが満たされる感覚もあります。天職とはこういうことかと思いました。

(2022年 世界遺産 仁和寺 白書院にて)

 

運命のいたずら、はたまた因果。自分がこの先どうなるかも分かりませんけれども、3/14(金)から3日間、周南市の蔦屋書店さんで拙作の仏画を展示いたします。【小粥展】、目撃いただけますと幸いです。

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