尼婆羅のけんちくについて書く。
「尼婆羅」と書いて何と読むか?正解は「ネパール」。先日、知人のネパール行きに付いて行った。その際に印象に残ったことを。
たまに「人の出張に付いて行く」ことがある。説明が面倒くさいので周りにはそれが趣味だと言っている。何歳になっても見聞を広める機会をたくさん持ちたいが、だんだんそうも言ってられなくなる。だから人様の機会にも乗っかるようになった。過去の投稿にある『センス入門』(松浦弥太郎)や、日下慶太さんが講演でお話しされる「機会への投資」の、自分なりの実践の一つ、、、のつもり。付いて来られる方の気持ちを考えたことは、、、まだ無い。
首都カトマンドゥとその郊外での滞在だった。特に印象に残ったことを。ひとつは郊外で顕著だったが、3〜5階程度の中層建物はRC(鉄筋コンクリート)造の柱と床(屋根)を作り、柱と床ができたらレンガを一つ一つ積んで壁をつくり、最後はモルタルで表面を綺麗に仕上げて、まぁなんてことでしょう!工事中、床を支える支保工(サポート柱)をこれでもかという数を立て、現場によってはいまだに竹を使う光景は日本では見ることがないのでとても目を引く。最上階はいつでも増床できるように、柱の鉄筋剥き出しのままというのもよく見る。20年前にエジプトに行った時もそうだったし、数年前に見たアジアの他の国でもそうだった。今でも世界各国で見られるスタンダードスタイル。大らかでいい。ネパールの郊外では完成していなくても使用するし、うまく生活空間として取り入れていたりする。大らかでいい。

建物進化論。右から左へ進化の過程が。右から2番目は物干し場へと独自の進化を。
もうひとつは、小さなけんちくたちが素敵だった。街中にある小ぶりな祠や小屋、郊外のバス停、休憩所や売店。つくりは簡素だが、どれも魅力的。ある休憩所では景色を眺めながら暑い陽射しを避け、心地よい風を浴びチャイを飲みながら寛ぐことができる。立ち姿もいい。シンプルで、空間も気持ちのいいけんちくだった。持って帰りたいくらいだった。置くとこないけど。
そしてラスト。郊外では規模や構造を問わずほとんどの建物にベランダやテラス、屋上など、たっぷりと半屋外空間が付いている。気候的に夏の暑さや湿度に対する対処法として中間領域が生活空間の一つとして効果的に機能しているのだろう。ベランダやテラスの柵という柵にとうもろこしが干してある光景もよく見かけた。風通しのいい場所で効率よく乾燥できる生活の知恵であり、作業スペースとしても便利なのだろう。
様々な生き生きとした姿を見て、日本では「四季折々の…」「自然豊かな…」「古来より自然に寄り添った…」、そんな枕詞が付くことが多い。ある時代までは確かにそうだった。気候も(昔よりはというところは多少あるが)大きくは変わらない中で、現代の日本人の一人である自分はどうかと、とても多くのことを考えるきっかけになった。どうすべきか、どうなるかは今は分からないし、難しいところもきっとあるが。
実体験を伴って色々なことに気づくきっかけを得たネパールだったと思う。さて、次は誰の出張に付いて行こうかしら。