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「iti_setouchi見学会」イベントレポート

「iti_setouchi見学会」イベントレポート

「建築の創造とは、私たちの背後にあるそうした歴史的なもの、隠されたものを浮かび上がらせてそれを意識化し、対象化し、ずらし、変形し、解体し、再構成することに他ならない。」 −−−−−− 『建築の多様性と対立性』ロバート・ヴェンチューリ(1966年)

広島県福山市にあるiti_setouchiの見学会を行なった(2023年7月8日)。

そこはiti_setouchiという「施設」というより、そういう「場所」だ、という感想を強くもつ体験だった。

街に残された百貨店だった大きな空きビルに新たな解決策を示した事例としてもとても興味深く、様々な媒体でその取組みが紹介される。詳細は後述のウェブサイト等をぜひ参照いただきたい。

見学会のきっかけは工事中の建物の一部をオープンスペースとして街に開放し、工事の様子を見せたり、イベントを開催したりと、言うのは簡単だが実際に実施していること知ったからだ。

福山駅や繁華街から徒歩圏内ではあるが、街の賑わいの端に位置する。そこに残された巨大な建物。全てのシャッターが閉じられ取りつく島のない無表情な巨大ボリュームが聳え立つよりも、ただ開いていてくれるだけで街の表情がこんなに和らぐのかと、行って見て体感して、当時驚いた。ぐるり閉ざされた殺風景な無表情感とは全く違った、ただ開いているだけがすごかった。

 

オープンしたら必ず見に行こうと。で、オープンしたので見学会に託けて今度は大人数でお邪魔させていただいた。

「iti_setouchi見学会」イベントレポート

「屋根の下の公園」が改修に当たっての建築のコンセプトとのこと。半屋外の、空気だけでなく雰囲気も風通しのよい空間だった。一つ一つの空間や店舗の説明は割愛するが、商品の魅力がそこの魅力というこれまでの商業施設と違い、何かが起こりそう、既に何かが起こっていそう、という空気感がとても魅力的だった。「これは何?」「ここはどうやって利用するのだろう?」と、一瞬考えるがすぐに「そうか!そうか!」と使いかたを身体でつかんでいける、そんなところも「公園」的な場所だった。良い意味で色々なことが許容されるし、その時々の色がついていて楽しい。誰かがいて、何かをしていてちょっと覗いてみたくなる。コンビニエントで一様な、どこに行っても存在してくれて安心する施設に慣れてしまった身には、なんでも背負い込み、なんでも許容してくれる、誰にでも場所が開かれている面白さを再確認できた。

運営する上では、当然きれいごとだけでは済まない収支や経営からの判断もあるだろうが、歴史があり、想いがあり、多くの市民の思い出がある場所を、こういう「場所」として開き、再稼働させた福山の一企業の心意気に感動した。

「iti_setouchi見学会」イベントレポート

JR福山駅からiti_setouchiに向かう高架沿いに、往時の写真が掲出してある。その中の一枚に、福山そごうの開店初日の行列を写した写真があった。

改めてこの場所は福山の街にずっとあったのだとリマインドさせてくれる。無くなったのではなく、こんな歴史も踏まえてこれからもこの場所は開かれ続けるのだと。素敵な街だと思った。

 

 

参考:

◯馬場正尊の建築レポート|広島県福山市「iti SETOUCHI」

https://www.realpublicestate.jp/post/iti_setouchi/

 

◯公共R不動産のプロジェクトスタディ

巨大な元百貨店を「屋根のある公園」と見立てた「iti SETOUCHI」の挑戦

https://www.realpublicestate.jp/post/itisetouchi/

 

「百貨店の公園化」と連動する福山駅周辺のエリア再生

https://www.realpublicestate.jp/post/itisetouchi02/

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